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セルロースファイバーがなぜ良い断熱材といわれるのか?メリットデメリットを紹介

セルロースファイバーとは、天然の木質繊維でできた断熱材の一種です。

1950年代にアメリカで開発されて以来、その断熱性能の高さから世界中に普及しています。セルロースファイバーは、原材料の80%が新聞紙で作られている環境にやさしい断熱材のため住む人と地球環境にやさしいエコロジーかつ高性能な断熱材と言われています。

断熱材の種類

断熱材の種類には、

セルロースファイバー、グラスウール、ロックウール、現場発泡系ウレタンフォーム、羊毛断熱材、フェノールフォーム、押出法ポリスチレンフォーム(XPS)、発泡スチロール(ビーズ法ポリスチレンフォーム EPS)、硬質ウレタンフォーム(板状)など様々な種類があります。

グラスウールとセルロースファイバーの違い

グラスウールとは、ガラス繊維(細長いガラスと接着剤の混合繊維)でできた綿状の素材です。グラスウールの特徴はとにかく安いことにあります。

素材そのものの価格もさることながら、施工や輸送が簡単なためコストを抑え、とても安価に使用することができます。そのため日本では最もメジャーな断熱材がグラスウールと言えます。

しかし断熱材の重要なことの一つ、施工の精度がセルロースファイバーに比べて下回ります。

断熱材の断熱性能と施工の関係

断熱材が持つ本来の断熱性能を活かすには、断熱材が正しく機能していることが前提条件となります。隙間なく、歪みなく、きれいに施工しなければなりません。

グラスウールは現場で切断しながら施工するので隙間なく埋めることが難しい断熱材なのです。

セルロースファイバーのメリット

発泡スチロール系としてよく名前が挙がる、グラスウールやロックウール等の断熱材と比較して、セルロースファイバーが優れている点は、断熱性能や吸放湿性能の他、防音、防火、防虫性能など、数多くのメリットがあります。

調湿効果

セルロースファイバーには、水分の吸放湿性があります。

木質繊維は周囲の状態に応じて、水分を吸ったり吐いたりしています。

この吸放湿性が適度な湿度をもたらし、結露を防止するのです。

自然素材ならではの吸放湿性によって湿気を吸うので適度な湿度を保つことができ室内や壁体内部の結露やカビを予防でき家が腐ることを防ぎます。

セルロースファイバーは外気の湿度が高いときには湿気を吸い取り、乾燥しているときは蓄えた湿気を徐々に吐き出すという、生きている繊維ならではの調湿効果を発揮しますので、部屋の中はいつも快適な湿度に保たれます。

断熱効果

セルロースファイバーの断熱性能により、夏は涼しく冬は暖かい家の実現が可能になります。

断熱材の断熱効果を表す数値として、熱伝導率※という数値があります。

熱伝導率が低ければ低いほど、断熱材としての性能が高いという意味です。

セルロースファイバーは断熱材としてはグラスウールと発泡スチロールの中間ぐらいの性能を持つ断熱材です。

中間くらいかと思うかもしれませんが、断熱材の性能を図るのは熱伝導率だけではありません。

断熱材が高い断熱性能を発揮するかは、熱伝導率の他に、「断熱材の厚み」「施工の精度」が大事なのです。

高い断熱性能を発揮するために重要な要素が「断熱材の厚み」です。

断熱材をどの程度の厚みで施工するのかで断熱性能は変化します。

標準的な外壁の断熱性能であるU値0.53W/m2Kの壁を作るためには、アルミニウムだと厚みは447m、コンクリートだと2.6m、木材でも189mmも必要です。

これでは壁の中に納まりません。

一方断熱材では、グラスウールでは87㎜、セルロースファイバーは74mm、発泡スチロールでは56mmで実現できます。

いずれも105mmの柱間に収まる寸法です。

そしてもう一つ重要な要素として「隙間が無い施工」というものがあります。

セルロースファイバーは、細かい断熱材を壁の空洞に詰め込む断熱材のため、マット状・板状断熱材と比較すると、圧倒的に隙間を作らずに施工する事ができます。

防音・吸音効果

セルロースファイバーを壁の中に吹き込み高密度に充填することにより、非常に高い防音性能で静かな家を実現できます。

セルロースファイバーは、音を吸収するたくさんの小さい穴(多孔性)を持っており、生活音や騒音をやわらげます。

また、天井や床下にも同じように施工ができますので、マンションで上階の騒音にお悩みの方にも非常に効果があります。

難燃効果

セルロースファイバーには、ホウ酸が難燃剤として添加されており、この効果が火が燃え広がることを防いでくれます。

燃焼時に表面が炭化される事で、その炭化層が酸素と熱から内部木材を保護するからです。

防虫・防カビ

セルロースファイバーにはホウ酸が配合されてるため、シロアリやゴキブリといった害虫予防に効果があります。

ゴキブリ退治で有名なホウ酸ダンゴと同じ成分が少々含まれており、ゴキブリなどが嫌う防虫(殺菌)効果があるのです。

壁や天井裏には防虫効果の高いセルロースファイバーが詰まっておりますので、ゴキブリなどの活動範囲が大幅に減少します。

また、防虫のみならず、カビ、ダニ、虫類、ネズミなどを防ぎます。

安全性が高い

セルロースファイバーは植物繊維でできた自然素材のため、万が一体内に入るようなことがあっても、蓄積されずにそのまま排出されるため、人体への影響はありません。

混ぜ込んだホウ酸に関しても、ごく普通のありふれた自然素材であり、眼科治療において目の消毒に使われているように人体への害はほとんどない安全性の高い天然素材です。

環境に優しい

これからの住宅資材は、地球環境に優しくなくてはなりません。

セルロースファイバーは新聞古紙をリサイクルしたもの。

製造過程でも、一般的な内断熱材であるグラスウールを製造するよりも格段に少ないエネルギーで製造することができます。

セルロースファイバーのデメリット

グラスウールと比較してコストが高く、施工時に専用機械と専門職人が必要なことが他の断熱材に比べてデメリットになると考えられます。

セルロースファイバーは良い断熱材だということがわかりましたが、いくつかのデメリットとその理由や対策についても解説しましょう。

セルロースファイバーは他の断熱材に比べると価格が高い

セルロースファイバーは密度を高くするため、たくさんの量が必要になります。

グラスウールと比較しても、セルロースファイバーの方が約3倍以上もの量を使用します。

この量の差を見ても、セルロースファイバーはたくさんの断熱材を使用するためその分コストがかかるということがわかります。

さらに、セルロースファイバーは、グラスウールのようにマット状で搬入されないため、建築現場でシートを貼り、シートの中に1スパン毎にホースで吹き込み作業を丁寧に行うため大変手間がかかる作業になります。

この手間もコストに反映され価格が高くなる理由です。

そのため、最初の費用は他の断熱材より高くついてしまいますが、その分断熱性が高く光熱費を抑えることができます。

なお、セルロースファイバーの家は結露を防ぎサビを起こりにくくするため、家の老朽化を防ぎ、虫が湧きにくくすることからメンテナンスや修繕の費用も抑えられます。

それに、建てた後から断熱性能を高くしたいと思っても、壁の中の断熱材を入れるとなると石膏ボードを剥がしてやり直したりと大規模改修になり、多額のリフォーム費用がかかります。

後から後悔しリフォーム費用が掛からなくするためにも、家を建てる時から断熱材まで考慮して選ぶことをおすすめします。

室内で沈下する

長期的に見ると、セルロースファイバーは素材の重さで沈下して上部に隙間ができてしまう可能性があります。

隙間は結露が起こったり、断熱性能が落ちる原因となるので対策したいものです。

セルロースファイバーの沈下の問題は施工精度で解決することができます。

自重の沈下に耐えられるように、55kg以上の密度に充填しパンパンに吹き込めば、沈下はほとんど発生しません。

施工日数がかかるため、セルロースファイバーの施行中は他の工事業者の作業がしにくい

セルロースファイバーの断熱工事は、建物の全ての階の壁と勾配天井を同時に施工します。

柱と柱の間、勾配天井の母屋の間全てにシートを貼り、貼り終わったら、1スパンずつセルロースファイバーを吹き込んでいきます。

そのため、とても手間がかかり、セルロースファイバーの工事中は、建物の中の他の工事ができなくなります。

工事日数はかかりますが、何十年も住む家づくりですので、数日程度日数が伸びることは問題ないと思う方が多いようです。

セルロースファイバーは環境にも人にも優しい

セルロースファイバーは新聞紙からのリサイクルからできた天然素材の断熱材です。

自然素材のため、体内に入るようなことがあっても蓄積されずにそのまま排出されるため人体への影響はありません。

また、本工法には一切接着剤を使用しておりませんので接着剤の成分によるシックハウスの恐れもありません。配合しているホウ酸に関しても自然素材であり人体への害はほとんどない安全性の高い天然素材です。

原材料や材質、製造過程でグラスウール等ほかの断熱材よりCO2の排出が極めて少なく地球環境にやさしい住宅資材です。

 

 

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